すっぽんに似た生きものには、カメの他にスッポンモドキがいます。
あまり馴染みのない生きものですが、「スッポンモドキ」と呼ばれるからには、すっぽんと似通ったところと違うところがそれぞれあるのでしょう。
2つの種類を比較してみましょう。
※すっぽんには色々な種類がありますが、ここでスッポンモドキと比較する「すっぽん」は、日本を含むアジア圏に生息する「キョクトウスッポン」です。
スッポンモドキとは
スッポンモドキとは、爬虫綱カメ目スッポンモドキ科スッポンモドキ属に分類されるカメの一種です。
「爬虫綱カメ目」までは、同じカメの一種としてすっぽんと同じ分類に入りますが、スッポンモドキはこの一種のみで「スッポンモドキ科スッポンモドキ属」という分類を構成しています。
このスッポンモドキ科は、すっぽんの属する「スッポン科」に最も近いとされています。
すっぽんとの違い
すっぽんとスッポンモドキの違いを見比べてみましょう。
甲羅
すっぽんの最大甲長は38.5cmほどで、大きな個体では60cmくらいになることもあります。
カメなど他の爬虫類にみられるようなウロコがなく、甲羅は皮膚が変化してできたため柔らかく、弾力性があります。
個体によって違いはありますが、甲羅の色は緑がかった灰色をしています。
スッポンモドキの最大甲長は、56.3cmとすっぽんよりも大型です。
大きな個体では80cmくらいに達することもあります。
すっぽんと同様に甲羅にはウロコがありませんが、すっぽんよりも硬く、甲羅を触った感触はカメのとすっぽんの間と表現されることもあります。
表面には無数の小さな穴が空いていて、全体的に灰色や暗い黄色をしています。
生態
すっぽんは水中生活に適した生態をもち、陸に上がらなくても長い首と鼻を水面から出すことによって、器用に呼吸することができます。
また、喉の毛細血管が大変発達していて、水中に溶け込んだ酸素をある程度取り入れることが可能です。
そのためほとんどの時間を水中で過ごしていますが、時折皮膚病の予防のため陸に上がって日光浴をし、甲羅を乾燥させることもあります。
水中での泳ぎも得意ですが、いざとなれば陸上でも素早い動きを見せることがあります。
一方のスッポンモドキは、完全水棲種といって、すっぽんよりも水中で過ごす時間が長い生きものです。
人間に飼育される個体で、皮膚病の治療などで甲羅干しを行わない限り、野生の個体が産卵以外の理由で陸に上がることはありません。
食性
すっぽんの食性は、魚類、両生類、甲殻類、貝類などの肉食傾向の強い雑食です。
水草なども食べることがあります。
一方、スッポンモドキは果実、藻類、水生植物が中心の植物食傾向の強い雑食です。
他にも魚類、甲殻類、昆虫類などを食べることもあります。
体
すっぽんとスッポンモドキの体で大きく違っているのは、四肢です。
すっぽんがカメのように太くたくましい四肢を持っているのに対し、スッポンモドキの四肢はカメというよりウミガメに似て、薄いオールのような形をしています。
また、すっぽんの足には5本の指があり、体の内側から3本に硬く頑丈な爪が生えています。
スッポンモドキの足にも5本の指がありますが、体の内側から2本にだけ爪が生えていて、残りの指は水かき状になっています。
すっぽんには、肉類を食いちぎったり陸上を素早く移動する際に必要な丈夫な爪が必要です。
一方、水中にいる時間の長いスッポンモドキには、爪よりも水かきが必要なため、このように進化したのではないでしょうか。
繁殖
すっぽんもスッポンモドキも卵生です。
すっぽんは6月~8月に繁殖期を迎え、1回に10~40個ほどの卵を生みます。
スッポンモドキは7~11月に繁殖期を迎え、1回に4~39個ほどの卵を生みます。
繁殖におけるこの二種の大きな違いは、雌雄の決定方法にあります。
スッポンモドキを含むカメのほどんどは、孵卵期間中の卵の場所の温度で性別が決定する、温度依存性決定です。
ある一定の温度よりも高温だとメス、低温だとオスになるといわれています。
ところが、すっぽんは性染色体によって雌雄が決定づけられているため、性別は産卵前からあらかじめ決まっています。
すっぽんとスッポンモドキは全く違う生きもの
すっぽんとスッポンモドキには、近縁でありながらさまざまな違いがあることがわかりました。
どちらも元々は同じ祖先だったかも知れませんが、それぞれが独自に進化を遂げた結果、こうしていくつもの違いがある2つの種類に分かれたのではないでしょうか。
興味を持たれた方はぜひ、すっぽんとスッポンモドキの違いを観察してみてください。