一部のペットショップではすっぽんがペットとして販売されていて、自宅で育てることが可能です。
しかし、すっぽんを卵から育てたことがあるという人はそう多くはないはずです。
すっぽんの産卵から卵が孵化する様子、成亀になるまでの過程を詳しくご説明します。
産卵
すっぽんの親亀はどのように産卵するのでしょうか?
産卵
すっぽんの親亀は1年に3~5回、5~9月の夏場に産卵時期を迎えます。
普段は完全な水生ですが、産卵のときのみ陸に上がって産卵場所を探します。
相応しい場所は砂か土のある場所で、15cmほどの深さの穴を堀り、直径約3cmの真っ白で丸いピンポン玉のような卵を合計で15~50個産み落とします。
産卵後、親亀は卵が外敵に見つからないように土をかけて隠します。
有精卵と無精卵
すっぽんは鶏と同じく、有精卵だけでなく無精卵という孵化しない卵を生む生き物です。
無精卵の場合は、水中や地表に産んで土をかけずにそのままにすることがあります。
養殖すっぽんの産卵
養殖場では、産卵場というすっぽんが産卵をするためだけの場所があります。
自然の環境に近づけるように適度に湿った砂が敷かれていて、産卵後は職員が丁寧に卵を掘り出し、容器に移します。
容器の中の卵は、一晩経つと有精卵のみ一部が白くなり、無精卵と見分けられるようになります。
その後は有精卵だけが孵化室へ運ばれ、孵化まで大切に育てられます。
孵化
こうして生まれた卵から、稚亀が誕生するまでの過程です。
天然すっぽんの孵化
天然のすっぽんでは産卵から40~80日の間に孵化が始まります。
気温の低い日や雨風の強い日が続くと、土の温度が上がらずほとんどが無事に孵化できないこともあります。
孵化できた卵からは、3cmほどの小さな稚亀が少しずつ殻を割って外に出ていきます。
養殖すっぽんの孵化
養殖場の孵化室では、砂に埋められた卵がその時を待っています。
まん丸の卵には上下があり、上と下を間違えて置くと孵化しないため細心の注意を払います。
徹底した温度管理で室温や水温は一定に保たれ、養殖では産卵から約45日ほどで孵化が始まります。
天然すっぽんと同様3cmほどの稚亀が生まれ、すぐに稚亀専用の養殖池に放流されます。
性別の決定
すっぽんには私たち人間と同じように、生まれながらに性染色体があるため、産卵の時点ですでにオスかメスかが決定しています。
一方、すっぽんとよく似た生き物であるカメは「温度依存性決定」といって、産卵から孵化までのこの時期に土の温度によって性別が決定します。
稚亀から成亀になるまで
稚亀は数年かけて大人のすっぽんへと成長していきます。
天然すっぽんが成亀になるまで
天然の稚亀がどのようにして成亀へと成長していくのか、残念ながら観察できたというデータはありません。
自然の荒波に揉まれながら、強い稚亀だけが立派なすっぽんへと成長していくのでしょう。
養殖すっぽんが成亀になるまで
ほどんどの卵の孵化が終わる秋頃は、稚亀の成長にとって大切な時期であるとともに、だんだんと冷え込んでくる季節でもあります。
ここですっぽんを飼育する方法が、気温の調節をするかどうかで2種類に分かれます。
露地養殖
露地養殖は、自然の環境に近付けた養殖方法です。
変温動物であるすっぽんは寒くなると冬眠しますが、露地養殖でも天然物と同じように冬眠をさせます。
それによってストレスを与えることなく、良質なすっぽんに育て上げることができます。
その一方で、この養殖法では安定して生産できるとはいえず、成亀になるまでに3~4年もの時間を要するために、販売価格は高くなりがちです。
加温養殖
加温養殖はボイラーなどで人工的に水の温度を上げ、冬眠をさせないという養殖方法です。
すっぽんは水温が30度の環境下で最も活動的になるといわれているため、一年中その水温を保ちます。
本来冬眠しているはずの冬にも餌を与え続け、生育スピードを上げることによって成亀になるまでの時間を1~2年に短縮することが可能です。
安定生産ができるため露地養殖に比べ低価格ですが、品質も低いといわれることがあります。
成亀になったすっぽん
成亀になったすっぽんは、出荷サイズになったものから出荷されていきます。
天然と露地養殖のすっぽん
天然のすっぽんは3~4年で成亀になり、捕獲され出荷されます。
露地養殖も同じくらいで成亀になり、冬眠している冬から春にかけてが出荷時期です。
加温養殖のすっぽん
加温養殖のすっぽんは1年ほどで成亀となり、一年中出荷されます。
特別生育の早いすっぽんは、親亀として違う池に移され交尾を経て産卵をします。
その他のすっぽんは、養殖場によって違いますが、だいたい800g前後にまで育つと出荷されていきます。
すっぽんの寿命
養殖すっぽんは生まれてから数年で食べられてしまいますが、本来すっぽんの寿命は30年という説もあれば100年という説もあります。
すっぽんの寿命に関する詳しい研究は行われていないようですが、長生きをする生き物という認識で間違いありません。
それなのに数年で人に食べられてしまうのですから、すっぽんを食べるときには感謝の気持ちを忘れずに美味しくいただきたいですね。