どうしてすっぽんの甲羅は柔らかい?

すっぽんはカメによく似た生きものですが、両者の最も大きな違いは甲羅にあるといえます。
硬くて重い甲羅をもつカメとは対象的に、すっぽんは柔らかくて軽量化された甲羅をもっています。
進化の過程で、すっぽんとカメの甲羅のつくりはどのように分岐していったのでしょうか?

すっぽんの甲羅の特徴

すっぽんの甲羅は、触るとゴムのように柔らかく、とても弾力性があります。
すっぽんの英名もその特徴的な甲羅に由来していて、「Soft-shelledturtle(柔らかい甲羅のカメ)」といいます。

また、すっぽんの甲羅表面には、同じ爬虫類であるカメがもっているような、六角形の模様やウロコがありません。

カメは危険を感じた場合、甲羅の中に完全に四肢と首を格納することができます。
一方のすっぽんは、四肢と首を多少すぼめることはできても、完全に格納することはできません。

このように、生物の体の一部が退化することを「退縮」といいます。

すっぽんの甲羅は何でできている?

理化学研究所などが属する研究グループの報告によると、カメの甲羅はあばら骨が進化したもので、骨でできているということです。

それに対してすっぽんの甲羅の正体は皮膚です。
その証拠に、すっぽんの皮膚病の症状は甲羅にも及ぶことがあります。

すっぽんのもつ甲羅のメリット

すっぽんの甲羅がカメとは違う進化を遂げたことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

身軽さ

皮膚でできた甲羅の最も大きなメリットは、骨でできたカメの甲羅よりも軽いということです。

ほどんどの時間を水中で過ごすすっぽんは、軽い甲羅に進化させることによって長時間の遊泳にも耐えられるようになったと考えられます。
また動きののろいイメージのあるカメとは違って、すっぽんはいざとなれば陸上でも素早く移動することができます。

水の抵抗を少なくする

すっぽんのもつ甲羅はカメに比べてなだらかな流線形をしていて、体に対して厚みがありません。
そのため遊泳時の水の抵抗が少なく、水中生活に適した形になったと考えられます。

素早く隠れられる

「噛みついたら雷が鳴っても離さない」という言葉もあるように、獰猛な一面を見せることもあるすっぽん。
しかし、これはあくまで防衛本能によるもので、本来はとても臆病者です。
外敵や人間の気配を感じたら、すっぽんが攻撃よりも優先することは、すぐに身を隠すことです。

狭い岩間や穴などに身を隠す際、その柔らかい甲羅がとても役に立ちます。
カメのように硬くて大きな甲羅では、きっと邪魔になってしまうことでしょう。

独自の進化を遂げたすっぽん

すっぽんは、生物学上はカメと同じグループに属しながら、生活環境や習性に応じて独自の進化を遂げました。
食材として注目されることの多いすっぽんですが、こうして生きものとして注目してみても興味深いですね。